本日のたよりは、福島からのお便りの最終章となります。 今回は、お便りというのではなく、夏休みの宿題の作文として、前田ファミリーの駿佑君と匠摩君が書き上げたものを、前田ママさんが送って下さったものです。 大変感銘を受けましたので、ぜひ、皆さんにも読んで頂きたいと思いまして、許可を頂き、掲載致します。 前田ママが撮影された写真と共に紹介させて頂きます。 こちらが撮影した写真と『かっぱずん』ちゃんのイラストもお供します。
まずは、長男の駿佑君の作文です。
「 『ありがとう』 1年 前田駿佑
僕は、8月9日から11日まで三重県へ行きました。 これは、ただの旅行ではなく、三重県松阪市飯高町波瀬のむらづくり協議会の方たち主催で、震災後の2年目から毎年続けて行っている『ふくみえ 子ども交流・リーダー研修&いっしょにあそぼ!in 波瀬』という保養です。 僕は初回から毎年行かせてもらい、今年でもう5回目の参加になりました。 この企画は、共催にNPO法人、後援に三重県と松阪市などはば広い多くの方たちの協力で成り立っています。
福島にはまだまだ放射線の高い地域があり、自然の中では十分に遊べない僕たち。 震災が起きたあの日から時が経過していくうちに、他県の人たちは、あの日のことを忘れ始めているのではないかと感じていました。 そんな中での今回の研修でしたが、波瀬に着いてからの開村式では、『あの日を忘れない』と、三重の人たちが何回も言ってくれて、その言葉が心に響き、胸が熱くなりました。」
「この研修の中で一番心に残ったイベントは川遊びでした。 三重の川はエメラルドグリーンで、とてもすきとおっており、夏には青青としげった葉が、秋には紅葉した木が水面に映り、四季折折の風景を楽しめる川です。」
「魚もたくさんいました。 僕はハゼやイモリ、ハヤなどをつかまえて楽しみました。 アユやアマゴなどは速くてつかまえられませんでしたが、アマゴとウナギを囲いの中で手づかみさせてくれるイベントがあり、ヌルヌルする感触を味わいながらつかまえるころができて、よい体験となりました。つかまえたアマゴとウナギはすぐに川原で焼いて食べさせてもらいました。 その味は最高で、ほっぺたが落ちるほど美味しかったです。」
「川遊びの中でも特に楽しかったのは飛び込みです。 高い岩の上から川の深い場所に飛び込むのは勇気のいるもので、岩の頂上に立った時のドキドキはたまらないものでした。」
「飛びこみも後ろ向きや空中前転などがありました。 見守ってくれているボランティアの方の声援のおかげで、勇気をもって挑戦し成功することができました。
この他にも、イノシシの丸焼きなどで命の恵みについて学んだり、川で水晶を拾ったりして、自然豊かなここでしかできない体験をたくさんさせてもらいました。
この企画が今までどれほど僕を支えてくれたか、言葉ではあらわせないほどです。 初めて波瀬を訪れた僕は小学校3年生でした。 放射線量が高くて、福島ではできなかった虫とりをおもうぞんぶんさせてもらいワクワクした事を今でも思い出します。 放射線のせいで福島ではがまんしなくてはいけない事もたくさんありましたが、波瀬に来ると毎年、のびのびと遊ぶことができました。」
「僕たちのために毎年たくさんの三重県の人達がボランティアや募金活動など様々な形で関わってくれています。 三重県の優しい人達との出会いは僕に力を与えてくれました。 このことを決して忘れてはいけないと思います。 これほど大きくなくても、被災地への支援の方法はたくさんあります。 今、僕たちは支援されている側です。 今年の春に熊本で大きな地震があった時には、僕にも何かできなかと考えました。 これから他の地域で災害がおきた時には、今度は支援する側になれると思います。 自分たちが経験したからこそ何が必要かが分かります。 さらに、こういった震災を忘れるのではなく、教訓とし、近いうちにおとずれるかもしれない首都直下地震に備えるなどするのもよいと思います。 地震大国の日本。 支援するという優しさが日本の人々を団結させ、また支援する、そういうよい連鎖が生まれ、困難ものりこえていけると思います。 この大切な事を僕は三重県の人達から学びました。 心からありがとうと言いたいと思います。」
続いて、次男の匠摩君の作文です。
「 大切なことを学んだ四日間の経験 前田匠摩
『おおっ、すごい!』 今ぼくは、三重県に向かうバスの中から東京スカイツリーをながめています。 東京の大きなビルにびっくりしながらも、ぼくの心は波瀬に飛んでいました。 早く波瀬の人たちに会いたいなー。 川で遊びたいなー。 という気持ちでワクワクしていました。 ぼくは5年前から三重県松阪市飯高町波瀬に、三重県の人たちの協力で毎年行かせてもらっています。 震災後、放射線のせいで思い切り外遊びのできない福島の子どもたちを波瀬の自然に招待してくれるのです。」
「11時間をかけてついに三重県に到着しました。 一年ぶりに三重の人たちと会えた時には嬉しくて気持ちが高ぶっている感じでした。 夜は最初の年からお世話になっているペンション、山林舎に泊めてもらいました。 山林舎は、でっかいお風呂に、この村でとれるヒノキがうかべてあります。 お風呂上りに卓球をして、ラムネをのみました。 その時、やっぱりここはいいなー、とホッとしました。」
「二日目は待ちに待っていた川遊びでした。 波瀬の川には魚がたくさんいて、ぼくは夢中で魚をつかまえました。 岩の上から川の中へダイビングもしました。」
「お昼には猟師さんがわなでつかまえたイノシシの子どもを丸焼きにしてくれました。 イノシシをそのまま鉄板の上で焼いて、ナイフで体に切れ目を入れて肉をむしって食べさせてくれました。 イノシシの肉はぶた肉を食べているような味と食感でした。 ちょっと前まで山の中で元気に生きていたイノシシが焼かれて体を切られるのは、すごくかわいそうでした。 なかなか食べることがないイノシシの丸焼きを食べて、命の大切さを知って、食べ物を大切にしないといけないと思いました。
三日目はアマゴとウナギのつかみどりをしました。 アマゴつかみは毎年させてもらっているのでなれて上達していましたが、初めてのウナギつかみはしなんのわざでした。 川の中ではヌルヌルしてすべってつかめないので、一回陸にウナギを追い込んで、体に土をくっつけて、やっとつかまえることができました。 つかまえた時は嬉しくて、『やったー!』と叫んでいました。 そのあとは自由に泳いでいましたが、川原に上がってみると、近くでボランティアの人たちがウナギをさばきはじめました。 そばに見に行くと、ウナギの頭にくいのようなものをさし、うめいているかのようにぐにゃぐにゃ動いている所におなかを切ってさばいていました。 ぼくがさっきつかまえたウナギがさばかれている所を見て、改めて命の大切さを知りました。 ウナギの命をもらっているんだと思いました。 これからは食事をもっと味わって食べようと思いました。 イノシシとウナギとアマゴを食べたことは忘れられない思い出になりました。」
「そしてまた川遊びが始まり、地元の小学生とチームを組んで、水てっぽうで遊びました。 その水てっぽうはボランティアの人が毎年竹で作ってくれる手作りの水てっぽうです。 友達とたくさん水をかけ合って楽しかったです。
夜には天体観測をして、色々な星を見ました。 木星、金星、土星の輪もすご方けど、ぼくの心に一番残ったのは、月でした。 どでかい天体望遠鏡をのぞいたら、月の表面がはっきり見えて、ぼくが宇宙にいて月のすぐそばにいるような気持になりました。 テレビでみたことがありましたが、月の表面にはいん石が落ちたようなあとがいっぱいありました。 すごいと思いました。」
「四日目はもう帰る日でした。」
「最後に三重と福島のきずなをさらに深めるために、山林舎の横に記念植樹をしました。 さるすべりの木でした。 みんなで木の根元に土をかけました。 さるすべりの木を見たら、この木のことを、三重の人たちのことを思い出すと思いました。」
「いよいよお別れの時が来ました。 一緒に過ごした人たちがたくさん見送りに来てくれていて、『ありがとう』と心から思いました。 五年間毎年会っている人もいました。 今年初めて会った人もいました。 どの人も、ぼくにとって大切な人だと思いました。 みんなが優しくしてくれたことで、ぼくも優しくなれている気がします。 ぼくはバスの窓から一生けんめい手をふりました。 みんなも見えなくなるまで手をふってくれました。 四日間の思い出が頭の中をよぎり、もっとここにいたいという気持ちでいっぱいになりました。 短い時間だったけど、たいせつなことをたくさん教えてもらった四日間でした。」
駿佑君と匠摩君のまっすぐな思いの深さ、感性の豊かさ、優しさ、そして、文章力に感服し、また胸が熱くなりました。 そして、放射能の怖さを改めて認識させてもらいました。 最後に前田ママさんのお便りも紹介させて頂きます。
「息子たちの夏休みの宿題を読んで頂きありがとうございます。 宿題のコピーで恐縮ですが、もちろんHP便りに載せて頂いて大丈夫です(#^.^#) 作文を読むと、息子たちが震災後毎年波瀬に行かせて頂いて、皆さんの優しさに育まれて心身共に成長させてもらってるのを感じます。 皆さんの優しさに触れる経験から、息子たちの中に優しい気持ちが育っているのだと思います。 息子たちは山林舎が大好きなので、山林舎に泊まる事も波瀬での特別な楽しみです。 (中略) 皆さんとの出会いと、5年間も続けて頂いているこの保養を心から感謝しています。 ありがとうございます(^o^) 前田牧子」
前田ママさん、息子さん達の作文をお送り頂きまして、本当にありがとうございました。 また嬉しいお便りも添えて頂きまして、重ねてお礼申し上げます。 駿佑君は福島でも強豪のサッカークラブに所属していて、昨年はキャンプ最後の日に別行動で大阪へ試合の為に向かわれました。 今年も試合があったそうですが、前田ママさんが、「こちらのほうが大事だと思ったので、休ませました。」と仰られた意味がよくわかるお二人の作文でした。 皆さんを拝見していて、私たちも学ぶことが多くあります。 駿佑君の作文に書かれていたように、助け合って、きずなを深めていきたいですね。 こちらこそ、本当にありがとうございました。
本日の波瀬: 曇天で、時折、パラパラと雨が降る1日でした。 櫛田川は水位は少し高いものの、透明な流れに戻っていました。
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